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Cracks of Foam

泡沫のヒビ

METAPHYS locus 43040 Mechanical Pencil


小さい頃、好きな色は紫色であった。感性に響くものがあったのであろうが何故好きになったのか明確な理由は覚えていない。自分は紫色が好きだと主張すると決まって大人たちは複雑な表情をした。それが嫌でたまらなかった。好きな色をある時から青色に変えた。大人たちは安心したような表情で自分と接するようになった。大人という生き物に嫌悪感を抱かずにはいられなかった。自分の意見を曲げる事を覚えた小学生がろくな大人に育つわけがない。現在の私である。一方で曲げたくない意見は声にしないというグレーな解決策も後から無事知ることが出来た。
そんな灰色の部分に文具趣味というのがあった。趣味はその大流の中に趣向というパーソナリティがある。それは自分の傾向ともいえる。「傾」の字からも分かる通り傾向とは偏りであり、それこそが昨今「沼」と呼ばれるものの正体であると私は考えている。
シャーペンに関しての傾向は、いかに力が加えやすいかというところにあった。握りやすさ、軸の強度、先端の強度を常に考えては試し、購入を繰り返していた。αゲル、シャーボX、ケリー、その他多数の物が自分の手をすり抜けていった。現在手元にあるのは表題のlocusとZOOM 707のみである。ZOOMはあの細身で力を加えてもビクともしない堅牢な作りに惚れて、遊び用として手元に置いている。自分には極論locusさえあればいい。私の趣向をこれ以上押さえたシャーペンは無い。手にした時の衝撃は今だに忘れられない。デザインは正直ダサい。慣れてくれば可愛らしいと思うようになり、今はこれ以外のデザインを私は認めない。筆記時のバランスが工学に基いて設計されているらしい。ダブルノック式の0.5でノック部分下部の蛇腹は埃が付着しやすいし、真鍮ボディの塗装はあまりにも禿げやすい。永く愛するなら手がかかり過ぎるぐらいが丁度いいのである。ブランドはMETAPHYSであるが、パートナー企業は不易糊工業株式会社。ノリのフエキである。残念ながら2017年1月1日を以って生産を中止してしまったそうだ。見つけ次第買い足そうと思う。筆記生活を万年筆にシフトして久しいが、locusで字を書くことの楽しさを再認識した。