Cracks of Foam

泡沫のヒビ

アルバム『メシ喰うな!』について

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西のペヤングは薄いんや…。

帰省するなり兄は流暢な関西弁で不満をこぼした。もう実に5年も前の話であるが、私はペヤングを食べる度にそれを思い出し、味覚とは何であるのかを粛々と考えるのであった。

色々と、もう本当に色々なことがぐるぐると巡り巡って、何の因果かまたしても名古屋の地に戻ってきた。住めば都と口々にのたまう箱入り娘達を尻目に、根無し草の私は今日の住所を書くのにいつも苦労を強いられる。衣食住、そのどれしもに興味が持てないのはきっと生前からなので、25年もしぶとく付き合っていることに時折冷めた感動を覚える。持て余せるほどの曖昧な欲望があってもいいのではないか。

INU町田町蔵率いるパンクバンド。唯一無二、孤高、極北、シーンの最重要バンド、様々な煽り文句に18歳の自分は胸をときめかせて、つるつるの壺を聴いたのであった。

若い頃は、といっても20歳までの自分はA面の比較的とっつきやすい曲を好んで聴いたものだが、今となってはM7のB面から聴き始めることの方が多くなっている。耳もギラギラとしたものを受け入れ難くなってくるのだろうか。

本アルバムは、パンクの持つ普遍的なイメージを破壊した1枚であるが、そのことによりパンクの定位が危うくなったのではないかと考えてしまう。勝手な妄想である。黄色に黒は警戒色、深い意味はない。薄味のペヤングを食べながらふと、そんなことを思った。